
韓国で銀行口座の可否を分ける「90日ルール」
韓国で外国人が銀行口座を開く際、ほぼすべての銀行が本人確認書類として求めるのが外国人登録証(외국인등록증)です。そして、この外国人登録証を発給されるかどうかを決めているのが出入国管理法です。
出入国管理法 第31条第1項:「外国人が入国した日から90日を超えて大韓民国に滞在しようとする場合は、大統領令で定めるところにより、入国した日から90日以内に、その滞在地を管轄する地方出入国・外国人官署の長に外国人登録をしなければならない。」(法制処 国家法令情報センター/2026年10月22日確認)
裏を返すと、90日を超えない滞在であれば外国人登録の義務がなく、外国人登録証も発給されないということです。これが、短期滞在者にとって韓国で銀行口座を持つことが難しい最大の理由です。
日本国籍の方の場合、韓国外交部の案内によると、2006年3月1日から実施されている韓日間の査証免除措置により、短期訪問であれば無査証で最長90日滞在でき、入国時には「観光通過(B-2)」の滞在資格が与えられます(就労・営利活動は不可)。さらに、電子旅行許可制(K-ETA)についても、韓国外交部の公告どおり日本を含む22の国・地域を対象に2026年12月31日まで一時免除が延長されています。
つまり、観光で韓国に来る日本人のほとんどは「外国人登録証を持たない短期滞在者」に当たります。だからこそ、銀行口座の話は「作れるか/作れないか」の二択ではなく、「作れない前提で何を使うか」で考えるほうが実用的です。
| 滞在タイプ | 外国人登録証 | 銀行口座の現実性 | 主な代替手段 |
|---|---|---|---|
| 観光(数日〜2週間) | なし | ほぼ不可 | プリペイドカード+日本発行カード |
| 長期旅行(90日以内) | なし | ほぼ不可 | プリペイドカード+現金 |
| ワーホリ・語学研修(90日超) | あり | 可能 | 一般の銀行口座 |
| 就労ビザ(E-7など) | あり | 可能 | 一般の銀行口座 |
| 駐在員の帯同家族(F-3) | あり | 可能 | 一般の銀行口座 |
| 出張(1〜2週間) | なし | ほぼ不可 | 法人カード+プリペイド |
| 留学(D-2) | あり | 可能 | 一般の銀行口座 |
| 非居住者のまま資金取引 | なし | 条件付きで可能 | 非居住者自由ウォン口座 |
| 韓国人配偶者がいる短期訪問 | なし | ほぼ不可 | 配偶者名義口座+プリペイド |
| 再入国を繰り返す短期滞在 | なし | ほぼ不可 | プリペイドカード |
短期滞在者が韓国で銀行口座を作りにくい3つの理由
「外国人登録証がないから」だけでは説明として足りません。制度面の背景を押さえておくと、銀行窓口で何を聞かれるのかが見えてきます。
- ① 実名確認書類の問題:韓国の銀行は口座開設時に実名確認を行います。外国人の場合、外国人登録証が最も標準的な書類で、これがないと確認手続きのハードルが一段上がります。
- ② 金融取引目的の確認:韓国金融委員会の資料によると、金融取引目的確認制度は2012年から運用されています。口座を何のために使うのかを示す裏付け資料が足りない場合、通常の口座開設は難しくなります。
- ③ 住所・連絡先の継続性:韓国の口座運用では、本人名義の韓国の携帯電話番号や滞在地住所が前提になる場面が多くあります。短期滞在ではこれらを揃えにくいのが実情です。
なお、裏付け資料が足りず通常の口座開設が難しいケースへの対応として、韓国金融委員会の発表によると2016年に「限度制限口座(한도제한계좌)」制度が導入されました。これが、韓国の口座事情を考えるうえで知っておきたい2つ目の選択肢につながります。
韓国で銀行口座の代わりになる5つの選択肢
ここからが本題です。短期滞在者が韓国での支払い・資金管理に使える手段を、現実的な順に5つ整理します。
選択肢1:一般の銀行口座(外国人登録証が前提)
90日を超えて滞在し、外国人登録証を取得した人が選べる本命です。インターネットバンキング、国内振込、海外送金、デビットカードまで一通り使えます。短期滞在者には基本的に縁がありませんが、「将来ワーホリや留学で来るかもしれない」という方は押さえておいて損はありません。
関連して、韓国法務部・金融委員会の発表によると、2025年3月21日から、モバイル外国人登録証を使って6つの銀行(新韓・ハナ・iM銀行・釜山・全北・済州)で口座開設などの金融業務ができるようになりました。このうち新韓銀行と全北銀行では非対面での手続きにも対応しています。ただしこれは「登録外国人」向けの制度であり、外国人登録証を持たない短期滞在者は対象外です。
選択肢2:限度制限口座(한도제한계좌)
裏付け資料が不足していても開設できる代わりに、1日あたりの取引額に上限がかかる口座です。韓国金融委員会の発表によると、2016年の制度導入から8年間据え置かれていた限度額が2024年5月2日(農協・ハナ・釜山銀行は5月10日)から引き上げられました。
| 取引方法 | 2024年5月1日まで | 2024年5月2日から | 引き上げ幅 |
|---|---|---|---|
| インターネットバンキング | 1日30万ウォン | 1日100万ウォン | 約3.3倍 |
| ATM引き出し | 1日30万ウォン | 1日100万ウォン | 約3.3倍 |
| ATM振込 | 1日30万ウォン | 1日100万ウォン | 約3.3倍 |
| 窓口取引 | 1日100万ウォン | 1日300万ウォン | 3倍 |
金融委員会の案内によると、この引き上げは既存の限度制限口座にも別途の申請なしに自動適用されます(従来の限度を維持したい利用者は銀行に申し出ることができます)。ただし、限度制限口座であっても開設には銀行ごとの審査があり、短期滞在のまま確実に口座を開けると約束するものではありません。
選択肢3:非居住者自由ウォン口座(비거주자자유원계정)
「韓国に住んでいない外国人が、韓国ウォン建ての資金を扱う」ための専用口座です。根拠は外国為替取引規定(외국환거래규정)第7-8条第5項で、ここには非居住者自由ウォン口座に預け入れできる資金の種類が列挙されています(企画財政部・財政経済部告示/2026年10月22日確認)。
- 非居住者(外国人居住者を含む)が外国から送金または携帯搬入した外貨資金を、韓国ウォンに売却した資金
- 非居住者が韓国ウォン建ての経常取引代金として取得した資金
- 本人名義の他の非居住者自由ウォン口座などからの振替
- 認められた資本取引によって韓国内で取得し、対外支払いが認められた資金
ポイントは、これが旅行者の日常決済用ではなく、資金の性格が法令で限定された口座だという点です。韓国国内で不動産取引や投資などの資金移動が必要な場合には検討の余地がありますが、「3泊4日のソウル旅行で使いたい」という目的には明らかに重すぎます。開設可否と必要書類は銀行ごとに異なるため、必ず事前に当該銀行へ直接確認してください。
選択肢4:交通系プリペイドカード(T-money など)
ここからが、短期滞在者にとっての現実解です。韓国の交通系プリペイドカードはコンビニや駅で現金購入・現金チャージでき、銀行口座も外国人登録証も一切要りません。地下鉄・バスはもちろん、コンビニなど一部の加盟店での支払いにも使えます。
乗り方・チャージ方法・乗り換え割引の詳細は、韓国の地下鉄とT-moneyの使い方ガイドにまとめています。コンビニでの使い方は韓国のコンビニ活用ガイドをご覧ください。
弱点は2つ。残高が韓国ウォンの現金として戻ってくるだけで、日本の口座には戻せないこと。そしてチャージが基本的に現金ベースであることです。
選択肢5:韓国ウォンをチャージして使うプリペイドカード(moin card)
「韓国で銀行口座は作れない。でも現金を持ち歩くのも、カードの為替レートも気になる」——この隙間を埋めるのが、韓国ウォンを事前にチャージして使うプリペイド型のカードです。
モインが準備しているmoin card(モインカード)は、韓国ウォンを前もってチャージして使うプリペイドカードです。特徴は次のとおりです。
- チャージ手数料0%
- チャージした韓国ウォンがそのまま差し引かれる:1万ウォンの決済なら1万ウォンちょうどが差し引かれ、別途の上乗せはありません
- 残った残高は日本の口座へ返金できます
- 決済と交通を1枚で使えます
※moin cardは2026年下半期リリース予定です。サービス内容・条件は変更される可能性があります。
口座がなくても回る:支払いシーン別の早見表
実際の旅行・出張で、口座がないことがどれだけ不便になるのか。シーン別に整理しました。
| シーン | 現金(ウォン) | 日本発行のカード | 韓国のプリペイド | 詳しい記事 |
|---|---|---|---|---|
| 地下鉄・バス | △(バスは釣銭なし) | ×(一部除く) | ◎ | 地下鉄・T-money |
| コンビニ | ◎ | ○ | ◎ | コンビニ |
| オリーブヤング | ◎ | ○ | ◎ | オリーブヤング |
| デリバリーアプリ | △(現金払い不可の店も) | △ | △ | デリバリーアプリ |
| タクシー | ○ | ○ | ○ | — |
| 屋台・在来市場 | ◎ | × | △ | — |
| カフェ・飲食店 | ○ | ○ | ◎ | — |
| 帰国時に余ったウォン | △(両替で目減り) | — | ○(返金可の場合) | 余ったウォンの扱い |
| 韓国から日本への送金 | × | × | × | 韓国→日本の送金FAQ |
| 韓国内での振込 | × | × | × | 口座が必要 |
この表で分かるとおり、口座が本当に必要になるのは「韓国国内での振込」と「韓国からの海外送金」のときです。買い物や移動なら、プリペイドカードと現金の組み合わせで十分に回ります。韓国から日本へお金を送る必要がある方は、韓国から日本への送金FAQも参考にしてください。
滞在日数別・出発前の準備チェックリスト
「自分はどこまで準備すればいいのか」を滞在日数で切り分けると、迷いが減ります。口座の要否と合わせて確認してください。
| 滞在日数 | 外国人登録 | 口座の要否 | 出発前にやること |
|---|---|---|---|
| 1〜3日 | 不要 | 不要 | 交通カードの入手先を決める |
| 4〜7日 | 不要 | 不要 | プリペイドのチャージ額を決める |
| 8〜14日 | 不要 | 不要 | 現金とカードの比率を決める |
| 15〜30日 | 不要 | 不要 | 家賃・宿泊費の支払い方法を事前確認 |
| 31〜60日 | 不要 | ほぼ不要 | 長期滞在先の支払い手段を確認 |
| 61〜90日 | 不要 | ほぼ不要 | 滞在終了時の残高処理を決めておく |
| 91日以上 | 必要(入国日から90日以内) | 必要になることが多い | 滞在地の住所確定と登録手続きの予約 |
| ワーホリ・留学 | 必要 | 必要 | 学校・勤務先からの書類を確認 |
| 就労 | 必要 | 必要(給与受取) | 雇用契約書など証憑を準備 |
| 出張(法人) | 不要 | 不要 | 法人カードの海外利用可否を確認 |
この表の「91日以上」の行だけが、外国人登録証という扉を通って一般の銀行口座にたどり着けるルートです。それ以外の行は、すべて「口座を使わずにどう支払うか」の設計になります。
現金・両替・ATMで気をつけたいこと
口座がない前提で動くとき、最後に残る論点が「韓国ウォンをどう手に入れ、どう使い切るか」です。ここは手数料の差が出やすいところなので、出発前に方針を決めておくと安心です。
- 両替は往復で2回コストがかかる:日本円→韓国ウォン、余った韓国ウォン→日本円。多めに両替するほど、戻すときの目減りも大きくなります
- 海外ATMでのキャッシングは手数料体系が複数:ATM設置側の手数料、カード会社の手数料、為替の扱いが別々にかかることがあります。利用前に自分のカードの条件を確認してください
- DCC(現地通貨建て/自国通貨建ての選択)に注意:決済端末で「日本円で支払いますか?」と聞かれたとき、どちらが有利かはレート次第です。内容を理解せずに選ぶのは避けましょう
- 現金が強い場面はまだ残っている:在来市場や一部の屋台など、カードが使えない場所もあります
- 使い切り設計にする:残高を日本の口座へ戻せる手段を1つ用意しておくと、両替の往復コストを減らせます
帰国時に韓国ウォンが残ってしまったときの選択肢は、余った韓国ウォンの扱い方に詳しくまとめています。
よくある質問:韓国で銀行口座と短期滞在
Q1. パスポートだけで口座を開設できますか?
銀行・支店ごとに取り扱いが異なります。公式機関が公表している「短期滞在者はパスポートのみで開設できる」という統一基準は、今回の調査では確認できませんでした。そのため本記事では断定を避けます。必要な場合は、渡航前に利用予定の銀行へ直接問い合わせてください。
Q2. 90日以内の滞在でも外国人登録はできますか?
出入国管理法第31条第1項は「90日を超えて滞在しようとする場合」に登録義務を課しています。第2項では、同項各号に該当する外国人(駐韓外国公館・国際機関の職員とその家族など)は本人が望む場合に滞在期間内に登録できると定めていますが、これは限定された対象です。一般の観光目的の短期滞在者が任意に登録できるとは書かれていません。
Q3. ネット銀行なら口座を簡単に作れますか?
非対面での開設であっても、実名確認と金融取引目的の確認は必要です。前述のモバイル外国人登録証による非対面手続き(新韓銀行・全北銀行)も、対象はあくまで登録外国人です。
Q4. 帰国時に余った韓国ウォンはどうすればいいですか?
現金なら再両替、交通カード残高なら所定の方法での払い戻し、プリペイドカードなら発行元のルールによります。詳しくは余った韓国ウォンの扱い方にまとめています。
Q5. 限度制限口座の1日100万ウォンは、旅行者には十分ですか?
韓国金融委員会が公表した限度額(インターネットバンキング・ATMとも1日100万ウォン、窓口は1日300万ウォン)は、日常的な生活費の範囲であれば足りる水準です。ただし前提として、口座そのものを開設できる状況にある必要があります。
Q6. 韓国人の家族・友人の口座を借りてもいいですか?
他人名義の口座を使う行為は金融実名制に抵触するおそれがあり、おすすめできません。自分名義で完結する手段を選んでください。
Q7. 短期滞在中に韓国でクレジットカードは作れますか?
銀行口座の開設が難しい状況では、与信を伴うクレジットカードの発行はさらに難しくなります。短期滞在であれば、日本で発行済みのカードを持参し、補助としてチャージ式のプリペイドカードを用意する構成が現実的です。
Q8. 外国人登録証を取得したあと、口座開設までどれくらいかかりますか?
所要期間は申請先や時期、銀行・支店の運用によって変わるため、公的に示された標準期間は今回の調査では確認できませんでした。余裕をもったスケジュールを組み、現地到着後すぐに手続きの予約状況を確認することをおすすめします。
まとめ:韓国で銀行口座は「作らない前提」で準備するのが近道
- 出入国管理法第31条により、外国人登録は入国日から90日を超えて滞在する場合の義務。短期滞在者には外国人登録証が発給されません
- 日本国籍者は査証免除で最長90日の滞在が可能(観光通過B-2)。K-ETAは2026年12月31日まで一時免除
- そのため、短期滞在のまま韓国の銀行口座を開設するのは現実的ではありません
- 限度制限口座(1日:インターネットバンキング100万ウォン/ATM 100万ウォン/窓口300万ウォン)や非居住者自由ウォン口座という制度はありますが、いずれも旅行者向けではありません
- 買い物・移動は、プリペイドカード+現金+日本発行カードの組み合わせで十分にカバーできます
「口座を作れるか」を調べる時間があるなら、韓国ウォンをどう持ち、どう使い、余った分をどう戻すかを決めておくほうが、旅の満足度に直結します。
moin card(モインカード)の事前登録のご案内
韓国ウォンをチャージ手数料0%でチャージでき、チャージした韓国ウォンがそのまま差し引かれる(1万ウォンの決済=1万ウォンの差し引き、別途の上乗せなし)。残った残高は日本の口座へ返金でき、決済と交通を1枚で。口座を持たない短期滞在者のために設計されたプリペイドカードです。
※moin cardは2026年下半期リリース予定です。サービス内容・条件は変更される可能性があります。
